
毎年、12月中旬になると発表される「今年の漢字」。この行事は1995年からスタートしていますが、なぜ始まったのか?と気になることがあるかもしれません。
元はといえば、「漢検の受験者数を増やしてほしい」という漢検協会のお願いから始まったイベントでした。実業家でPRの専門家でもある殿村美樹さんの手によって、たった半年ちょっとの間に制定された記念日なんです。
今回は、「今年の漢字」が始まったきっかけと、毎年行われるようになったエピソードについてご紹介します。
「今年の漢字」が始まったきっかけ
時代遅れの漢字のイメージ
バブル経済で盛り上がっていた1980年代後半、古くからある伝統よりも「海外の新しい文化」に触れることばかり注目されていた日本において、漢字には「遅れている」「ダサい」といったレッテルが貼られるようになりました。
そのような状況に困ったのが、日本漢字能力検定協会。漢検が始まったのは1975年でしたが、1995年になってもまだまだ無名の資格だったこともあり、受験者数が下がっていく一方だったんです。当時はWindows95が発売されたこともあり、誰でも「語学を勉強するなら外国語」というイメージがありました。
普段から使っている漢字の試験を受ける意味が、あまり見いだせてなかったんでしょう。今ほど資格というキーワードが浸透しているわけでもなく、検定といえば「専門的な技術に特化した」人のためにある……という印象が強かったんです。
そんな中、受験者を増やしてほしいとの依頼が漢検協会から出てきました。殿村さんは漢字そのものに関心を持ってもらうようなPR活動を行うことに決め、いろいろ考え始めます。
漢字に「旬」を定めてイベント化
しかし、漢字は日本人であれば日常的に使うものです。宣伝をしようにも「当たり前のことをいまさら?」と思われかねません。
そこで、万人が旬のニュースだと納得する「時」を定め、漢字を流行らせることにしました。
この出来事がちょうど年末ごろ。今年はどんな年だったかを振り返る心のつぶやきとして、「漢字一文字に表現すると注目が集まるのでは?」と考えた殿村さんは、全国参加型のイベントにして「漢字は世界でも珍しい表現の文字である」ことをアピールすることに決めたのです。
記念日として制定
ここまでくれば、あとは実行に移すだけ。
- 『良い字、1字』というゴロ合わせができる12月12日を「漢字の日」にする
- 記念日として認定してもらうため、日本記念日協会へ申請
- 年中行事として「今年の漢字」を漢検協会が実施
一年に一度のタイミングで発表することにより、今年の旬を振り返る行事ができあがった……というわけです。
記念日の制定としては短期間でしたが、初めて行われた1995年の「今年の漢字」は大成功。9万円ほどしか使われなかった広告予算に対して、報道効果は約100億円(当時の広告料など)まで達したんだといいます。スゴイですね……
バブル崩壊からしばらく経ち、震災や地下鉄サリン事件など、世の中が暗くなっていく中での転換期となったイベントとなりました。
まとめ
今年の漢字が始まったきっかけについて、ご紹介しました。このエピソードは殿村さんの下記の著書を読んで知ったんですけど、他にもけっこう有名どころのブームを作り上げています。
個人的には滋賀県彦根市のゆるキャラ「ひこにゃん」の話が面白かったですね。旅行のブームは女性が中心、という理由に納得できました(´・ω・`)
どんなイベントでも、やりようによって注目され直されるんだな〜と思ったエピソードでした。